彫金の技法
数多くのタガネを使い分け、優美な模様を創造
高岡銅器の名声を高めた要因の一つは、彫金の技術です。
長年にわたり、幾多の職人が新しい技法を創案してきました。
明治期の万国博覧会では数々の栄冠を獲得するなど、その優れた技法が世界を驚かせました。
彫金の技法
彫金は、金属の表面をタガネで切ったり押したりして、模様を彫り込む技法です。線を彫るタガネ、面を削るタガネ、穴を開けるタガネ、凸凹を平らにするタガネ、地文を打ち付けるタガネなど数十種類もあり、職人たてはそれらを使い分けながら、見事な美を創造しています。ここでは代表的な技法をいくつか紹介します。
| 連続した凹線で模様を彫り込む技法です。タガネの先端を金属表面に浅く入れたり、深く入れたりして、線の太い細いを出します。毛筆で描いたような柔らかな味をだすこともできます。 |
| 金属の一部を切り落とし、残った部分で模様を作る技法で、タガネと糸鋸を使います。普通の線彫り模様に比べ、華やかに仕上がります。 |
| タガネを軽く浮かせ、蹴るように打ち込んで線を刻む技法です。掘り込んだ痕は、楔の形をした点が連なっています。 |
| タガネで裏面から打ち出したり、表面を叩いて肉付けする技法です。肉の厚みによって使うタガネも異なります。 |
| 刃先が「一」の文字になったタガネを使い、花鳥風月の文様などを掘り込む技法です。刃先を幅広く使ったり、当てる角度を変えることによって、さまざまに表現することができます。 |
| 刃先が小さな輪になったタガネを使い、表面に魚の卵のような小さな円の文様を打ち込む技法です。シンプルですが、文様を美しく揃えるのは至難の技と言われます。 |
主な仕上げ加工
表面を加工する技法には、彫金のほかにも、さまざまなものがあります。
いずれも高岡銅器を特徴づける技法です。
| 金属の表面を削り、そこに別の金属をはめ込む技法です。明治初期に金沢の金工職人たちに学び、独自に発展させてきました。凹線に金や銀をはめ込む「線象嵌」、平面から盛り上げる「高肉象嵌」、表面に文様と同じ穴を開けて他の金属をはめ込んで蝋付けする「切嵌め象嵌」などがあります。 |
| 現在版画にも用いられるように、表面を酸で腐食させて多彩な模様を付ける技法です。 |
| 表面に圧縮空気で砂や金属の球を当て、梨地のようなつや消しに仕上げる技法です。 |
| 硝酸などの液に金属をつける腐食作用によって、表面のミクロ単位の凸凹を滑らかにする技法です。 |
| 表面に陶磁器片や鋼球を落として荒らす技法です。パラパラと落下させるので、古くから「パラ打ち」ともよばれます。 |
| 回転しているバフに研磨材を付け、表面を研磨する技法です。多種多様な研磨材を使い分けることで、荒い表面から鏡面までの仕上げが可能です。 |